鳥籠の夢 (25〜30分)
   

 作者:羽純せら


あらすじ


幼い頃からずっと鳥籠という名の牢獄に
閉じ込められた少女は、少年と出会い、儚い夢を見ます。
ここを抜け出して、いつか二人で幸せになりたいと

大人になり成長した二人はその夢を叶えようとしますが…。


【登場人物紹介】


真白(ましろ)♀:<少女10〜12歳 現在10代前半〜10代後半>
真っ白な髪に雪のように白い肌を持つ美少女。
生まれてすぐに教会に捨てられ、教会の奥に閉じ込められていた為、感情の起伏に乏しい。
海と出会い感情が芽生えていく。
        
海(かい)♂or♀:<少年13〜15歳 青年10代後半〜20代前半>
幼い時に、盗みをして捕まりそうになった時に神父に引き取られた。
偶然秘密の部屋を見つけて真白と出会い惹かれあう。明るくまっすぐな性格。

杏(あん)♀:<10代前半〜10代後半>
幼い時に教会に引き取られた。ほぼ海と同時期に引き取られた為、海とは幼馴染のような関係。
一人だけ綺麗に大事にされている真白の事を魔女と呼び嫌っている。

神父♂:年齢不詳
頭が切れ、表と裏をきっちりと使い分ける。表向きは優しく誠実な神父として名が通っているが
裏では、身寄りの無い子供たちを引き取り劣悪な環境で働かせている。裏の世界では切れ者で恐れられている。
真白を溺愛(変愛)している。

男♂:神父にやとわれている。(神父と兼ね役推奨)

ナレーション♂or♀:物語の語り手兼進行役


【配役表】 2:2:1

真白♀:
海♂:
杏♀:
神父&男♂:
ナレーター♂or♀:

※神父・ナレ・男は好きなように振り分けて下さい。海も少年と青年を分けても被りでもどちらでもOKです。
 演じる人や人数によって自由に振り分けて下さいませ。
 
年齢もあくまでイメージなので、演じる人によって変えていただいて構いません、ご自由にどうぞ!




※『』はモノローグや頭の中で響いている声です。


【1】プロローグ〜回想〜


ナレ:むかしむかし…ある所に幼い頃からずっと鳥篭という名の牢獄に
   閉じ込められた少女が居ました。

  少女は人形のようにとても愛らしく、その姿を見たものは一目で虜になってしまうような美しい少女でした。
  しかし、ガラスのような瞳は何も映さず、その心は時が止まったかのように何も感じませんでした。
 


ナレ:「教会とは本来、貧しい人々に施しを与え、救い…そして希望を与える場所
   でもここは、捨てられた子供や、まずしい子供達を表向きは慈善で引き取りながら、
   裏では劣悪な環境で働かせ、美しい子供はその体を……

    ここは、教会という名の牢獄なのでした…。

    ある日、教会につれて来られた一人の少年は
    偶然ある部屋を見つけます。

    そこは、一部の人間しか入る事を許されていない秘密の部屋でした……。」


神父:『可愛い可愛い私の小鳥…さぁ、おいで。』

真白(少女):「……」

神父:『お前はここから逃れられない・・・ずっと、私の手の中に。』

真白(少女):「……」


真白:『鳥かごに捕らえられた私は…かごの鳥
    幼い頃からずっとこの光のささない部屋に閉じ込められて
    夜になるとやってくる知らない男たちに、身体をもてあそばれる。
    ずっと闇の中だった…。

    でも…そんな時……。』


SE:キィー扉が開く

(きょろきょろしながら部屋の中を見回し、奥に居る少女を見つけゆっくりと歩み寄る)
海(少年):「あれ、どうしたんだ?お前なんでこんな所にいるんだ?」

真白(少女):「!?」

真白:『突然部屋に入ってきた、まぶしくてキラキラしていたあなたの姿』

海(少年):「どうしたんだ…?なにぼーっとしてんだよ、お前口きけないの?」


真白:『温かいあなたの声、ずっと離したくないと思った。
    あなたというたったひとつの光をずっと手放したくなかった。』


海(少年):「名前は…?」

真白(少女):「なま…え?」

海(少年):「うん、お前の名前」

真白(少女):「わたし…は……」


真白:『名前なんてないとうつむいた私に、あなたは、じゃあお前真っ白で綺麗だから真白だなと名づけてくれた。
   生まれつき真っ白な肌に真っ白な髪、コンプレックスだった自分の容姿を綺麗だといってくれた。
   人間として名前をつけてくれた……』

海(少年):「俺は…海<かい>だよ」

真白(少女):「か…い?」

海(少年):「ああ、うみって書いて、海<かい>」

真白(少女):「う…み…?」

海(少年):「そう、海<うみ>!見た事無いか?すっげぇ大きくて青くて」

真白(少女):「…(首を振る)」

海(少年):「知らねぇのか…(にこっと微笑み)そっか、じゃあいつか見せてやるよ!」


真白:『海は私と同じ教会に引き取られた子供だった。いつも真っ黒で薄汚れていて。
   けど、いつも瞳をキラキラさせて、ここから出られない私にいろんな話を聞かせてくれた。』

海(少年):「俺の親父は船乗りだったんだ!俺小さい時から一緒にいろんな国を旅して回ったんだぜ
       でも親父が死んで、母さんは俺が生まれてすぐに死んじゃってたし、
       んで、俺無一文になってさ、
       あんまりにも腹が減ってパンを盗んで逃げた時に、運悪くつかまっちまって
       そんな時にここの神父さまにひろわれたんだけどさ…

       最初はラッキーだって思ったさ、すげーでっかい由緒正しい教会って町の人から聞いてたし、

       でもここは、教会とは名ばかり、身寄りのない子供を拾っては、こきつかってるんだ!
       人前ではすんげーやさしい顔した神父面してさ!
        
       お前もそうなんだろ?」

真白(少女):「(俯いて)…私は、生まれた時からここに居たから……」


海(少年):「そっかーまぁでもお前は俺と違ってすげー大切にされてるみたいだよな。
      こんな綺麗な服着て、こんな教会の奥のこんな綺麗な部屋に閉じ込められてさ
       へへっ、最初見つけた時、ここ教会だし、本物の天使様かと思ったぜ。」


真白:『大事…?天使様…違う。全然違う!でも…言えなかった…。
    自分のことを綺麗だといってくれた海(かい)に、本当のことを知られたくなかった…
    本当は、私は籠の鳥…夜な夜なここにやって来る男たちの愛玩人形として…私はここに飼われている
    ただの哀れな籠の鳥…』

真白:『海は、父親についていろんな国を旅して回った時の事や、その他にも色んな事を話をしてくれた。
    私にとって海は世界のすべて…海は私の光だった…』


SE:ドアを開け勢いよく入ってくる

海(少年):「真白ーー!真白ー!!来たぜー」

真白(少女):「海!(嬉しそうに微笑み)あのね、私、海<うみ>の写真みた……海<うみ>ってすごい。」

海(少年):「ん?写真で見たのか、そうだぜー!でも本物はもっともっとすごいんだ!」

真白(少女):「いいなぁ…いつか見てみたいなぁ」

海(少年):「連れて行ってやるよ!俺が!絶対に!」

真白(少女):「ほんと…?」

海(少年):「ああ!俺が嘘言ったことあったか?(覗き込む)」

真白:「…っ(覗き込まれて少し頬を染め、ぶんぶんと首を振る)」

海(少年):「へへっ(それを見て満足気に微笑む)」

海(少年):「約束だ…絶対いつか二人で海に行こうな!」

真白(少女):「うん…っ!」

ナレ:「そうして、最初はぎこちなかった真白も
    海の明るくてまっすぐな人柄に惹かれて行き、徐々に心を開いて行きました。」


【2】〜数年後〜

ナレ:「そうしている内に、時は瞬く間に過ぎてゆき、
    海はあの日からずっと、自分の仕事が終わると、真っ先に真白の居る秘密の部屋を訪れるようになっていました。
    そうして真白も、いつしか海が部屋を訪れるのを何よりも楽しみに待つようになっていき…。

    自分が来るたびに本当に嬉しそうに微笑む真白の笑顔を見るたびに、海は真白の事を愛しく思うようになり。
    もちろん、それは真白も同じで…二人の心は年月を重ねるごとに強くなっていきました。


真白:『このままずっとこんな日々が続けばいいと思っていた。
   辛い事も海(かい)が来てくれればそれで忘れられた…』


SE:キィー扉が開く音

海「ただいまー…。」

ナレ:「そぉーっと扉が開き、一人の青年が姿を現しました。
   それは、あれから数年が経ち、背が伸び、成長した海でした。
   辺りを見回すと、薄汚れた小さな部屋。所々壁に穴が開いており、冷たい風が吹き込んでいます。

   その中央に申し訳程度に置いてある古いテーブルに突っ伏して海を待っていた少女がはっと顔をあげました。
   ここは教会に引き取られた子供たちにあてがわれた部屋。
   真白の居る部屋とは正反対の粗末な部屋でした。」

杏:「海…おかえり。」

杏:「…今日も遅かったのね。またあの子の所に行ってたの?」
   (真白の所に行く海を面白く思っていない)

海:「ん、まぁな。
   あ、ほら、今日は食い物もらって帰ってきたぜ!
   (手に持った食べ物を見せて辺りを見回す)他の皆は?」

杏:「もう皆、奥の部屋で寝ちゃったわよ…。」(部屋の奥の扉へ視線をやる)

海:「そっか、残念だなーせっかくもって来てやったのにな。」(残念そうに扉の方を見つめながらテーブルに食べ物を置く)

杏:「……」(そんな様子の海を見つめていたが、思い切ったように声を掛ける)

杏:「ねぇ、海。あんたいつまであそこに通うつもりなの?皆言ってるよ、海は魔女に魅入られてるって。」

海:「真白は魔女じゃない!」

杏:「(むっとして)!!なによ真白、真白って!!海は、あの女がやってる事知ってるの?
   あの子は教会の奥で、綺麗に大事にしてもらってるお姫様みたいに思えるかもしれないけど、
   やってる事はその辺の娼婦と同じなんだから!ただ相手がお金持ちってだけ…」

  (杏の言葉をさえぎるように)
海:「やめろ!!」(杏の頬を叩く)

杏:「っ!!」

杏:「(泣きそうになりながら)何よ、海の馬鹿!!私はずっとずっと昔から海の事が好きなのに…なんであんな子がいいのよ!」

海:「(はっとして手を押さえ俯く)…ごめん。俺、杏の事は妹のようにしか見れない。
   真白は…真白じゃないとだめなんだ。」

杏:「(悔しそうに唇を噛み)……あの子もうすぐ「金持ちの年寄りの所」へ売られていくわよ。」

海:「!?」

海:「何だって…それは本当なのか!」(杏に詰め寄る)

杏:「本当よ!聞いたもの!!(きっと海を見上げて)だから言ったじゃない!いくら想ったって無駄なのよ!
   どうせあの子は居なくなるんだから!!」

海:「……」

杏:「だからもうあの子の事は忘れて…」

海:「俺、真白を救い出す…」(ぼそっと)

杏:「え?…何言って」

海:「俺、真白と一緒にここを出る!!」(決心したように)

杏:「海!そんな事出来るわけないでしょ!!ここは教会とは名ばかりの危険な所なんだから!!」

海:「でもこのままじゃ真白は居なくなってしまう…二度と会えなくなっちまうんだ!!」

杏:「海!駄目よ駄目!!殺されるわ!今まで逃げ出そうとした子達がどうなったか知ってるでしょ!」
  (必死に海にしがみつき行かせまいとする)

海:「ごめん。杏。それでも俺は…」(杏を引き離し出て行く)

杏:「海!!」

SE:バタン扉が閉まる音


(一人取り残されてしばし放心したようにしていたが、静かに呟く)
杏:「……海…私達を捨てるの?」
 
  (何か思いつめたようにぶつぶつと呟きながら部屋と出ていく)
杏:「……許さない…そんなの絶対に許さない…」



【3】〜数日後〜


ナレ「それから数日が経ちました。海はあの後真白にすべてを打ち明け、一緒に逃げようと話を持ちかけていました。
   今日はその返事を聞く日でした。」

SE:キィー扉が開き、海が入ってくる

海:「はぁはぁ…ごめん遅くなった。」

真白:「(ほっとしたように微笑む)海…ううん、大丈夫?疲れてるんじゃない?」

海:「いや、大丈夫だ、それよりも決心してくれた?」

真白:「……。」

海:「このままじゃお前は売られていってしまうんだぞ!!そうしたらもう二度と会えない。
   俺はそんなの嫌だ!」
 
真白:「…でももし捕まったら…」(不安そうに海を見つめる)

海:「絶対大丈夫だ!」(抱きしめて)

海:「俺は、お前に見せてやりたいんだ…綺麗な空も海も…俺はお前と一緒に生きていきたい!」

真白:「海…」

海:「大丈夫だ、絶対上手くいく…知り合いに話をつけて、小さな船を借りられたんだ。
  その日は神父も、町の金持ちの奴らと会合に出かけて帰ってこない、明日しかない!」

真白:「……」

海:「お前は人間なんだ。こんな所にずっと居ちゃ駄目だ!」

海:「明日、今日と同じ時間に迎えにくる!その時に、一緒に逃げよう!」

真白:「海…いいの…?」

海:「見せてやるよ…約束しただろ?俺の名前と同じ海(うみ)!見に行こうぜ。」

真白:『出会ったころから変わらないキラキラした瞳、

    自信に満ちた笑顔…私は信じてみたくなった

    ここを出て、海と二人で生きていく、新しい未来を。』


真白、海が出て行った後、海<うみ>の写真を眺めながら微笑む

真白「…約束。」

SE:がちゃり、扉が開く

真白「!…海?(海が戻ってきたのかと思い、振り返った視線の先に神父が立っている)」

神父「…どうした、今日はえらく嬉しそうだな。」(ゆっくりと近づいてくる)

真白「っ!」(はっとして持っていた海の写真を後ろに隠す)

神父「何かいいことでもあったのか?」

真白「(びくっとして)!?…そんな事ない。」

神父「(真白の髪に触れながら)そうか…。(意味ありげに微笑む)」

  
真白『神様…どうかお願いします。これからもずっと、海と一緒に居られますように…』


ナレ:「悲痛な願いは闇に溶けて…けれども、その願いが叶えられる事は永遠にありませんでした…。」



【4】〜逃亡当日、二人で逃げ出すが、見つかってしまう〜

バタバタと数人の追いかけられている

海&真白:「はぁ…はぁ…はぁ」(海と真白が教会を抜け出し二人で走っている。その後を神父にやとわれた男達が追う)

(物陰に隠れて)
海「くそっ!!なんで、こんなに早くばれたんだ!!」

真白「海…」(不安そうに見上げ)

海「なんでだ…今日は出払ってて誰も居ないはずなのに。」

男:「居たぞーーー!!こっちだーーー!!」

海「くそぉっ!!!」(真白の手をとって走る)

男:「止まれーー!!止まらないと撃つぞーー!!」

真白:「あっ!」(転ぶ)

海:「真白!!」

真白「っ!海!」(あまり走りなれていないので、すぐに立ち上がれない)

海「真白逃げろーーー!!」

男:「手間取らせやがって!こいつっ!!」(追いついた男が、転んだ真白の髪を掴み上げ捕まえる)

真白:「っ!!嫌っ!離して!!」

海:「真白ーー!!くそっ!真白を離せー!!」
  (真白を助けようと、飛び掛った海と男がもつれ合う)

男:「こいつ!!離せ!!」

真白:「やめて!!やめてぇーーーー!!」

SE:バーン、銃声 

海:「う…あっ…」(銃で胸を撃たれ、その場に崩れ落ちる)

真白:「海!!海ーーー!!」(涙を一杯にためて駆け寄る)

海:「ごめん…どじっちゃったな…」(苦しそうに眉根を寄せながら呟く)

真白:「喋らないで!!血が…血が!!」

海:「お前…を…ここから…救い出したかったんだ…」(自分がもう助からないと悟り、ゆっくりと喋りだす)

真白:「誰か!誰か助けて!!お願い!!」

海:「ごめん…お前を置いていっちまうな…げほっ(血を吐く)ほんと俺って駄目だよな…(苦しげに)」

真白:「いや!!いやぁ!!置いていかないで…私を置いていかないで!!」

海:「お前と一緒に…生きて行きたかった…ずっと…」

海:「ごめんな…まし…ろ…あいして…る……」

男:「ほら!こいっ」(真白、男に掴まれ、引きづられていく)

真白:「いや…いやぁあ!!海っ!!海ーーーー!!」(悲痛な叫びが辺りに響き渡る)


ナレ:「男と真白が去った後、そんな様子をずっと隠れて見つめていた影が一つ姿を現します。
    それは今日二人が逃げ出すことを神父に密告した杏でした。」

杏:「…あ…か、海……」

杏:「…こんな…こんなことになるなんて…あ…私…私のせい…ごめんなさい…ごめんなさいーーー!!」

(冷たくなってしまった海にすがり付いて泣き崩れる)



【5】秘密の部屋〜エピローグ

SE:ギィーっと扉が開き、カツカツと近づいてくる足音

(微動だににしないで床に座っている真白)

神父:「聞いたぞ、逃げようとしたんだってな…ふふふ、お前が、ここから逃げられるわけがないだろう。
    それにしても海も馬鹿な奴だな、お前を助けようとするから、こんな目にあって。」

神父:「そういえば海は、私がお前を売ると思っていたらしいな、
   馬鹿なやつだ、私がお前を手放すはずがないだろう(冷たく微笑み)
   こんなに金になって美しいお前を(真白の頬をなでる)」
    

真白:「…海…海…」(人形のようにピクリとも動かずうわごとのように呟いている)

神父:「お前は逃げられない…お前は哀れな小鳥だ、ずっとここから逃(のが)れられはしない。」

    (何も映さない瞳を見て、満足そうに微笑む)
神父:「そうだ…その瞳だ。何も映さないガラスのような美しい瞳。お前はそれでいいのだ。」

神父:「真白…私の可愛い…美しい小鳥…(微笑み真白を抱きしめる)」

ナレ:「幼い頃からずっと鳥籠という名の牢獄に閉じ込められた少女は、少年と出会い、儚い夢を見ます。
    ここを抜け出して、いつか二人で幸せになりたいと…

    大人になり成長した二人はその夢を叶えようとしますが

    それは決して叶えられはしませんでした…。

    鳥籠は永遠に…その少女を捕らえて離しませんでした。」


真白:『そして…私はまた…籠の鳥……

    あなたがいない…世界に…私はもう…要らない…

    鳥籠の鳥は、夢は見ない……もう何も…見えない……。』


SE:ギィーバタン(扉が閉められる音)



END