【版権台本】『君の黒い羽根〜永遠の片想い』末次由紀 (30〜40分)
   

※声劇用にする為に、多少原作とは違いますが、ご容赦ください。

台本の全ての権利は原作者様にございます。
趣味の範囲で楽しむために書き起こしたものになりますので、
グレーゾーンであることを理解した上で、ご利用下さい。

 【登場人物】

・女悪魔♀:男は皆自分の虜になると思っている。
       我侭で素直じゃない、誘惑系悪魔。

・男悪魔♂:女悪魔とは昔からの腐れ縁。口では嫌いだといいつつも本当は・・・

・健太♂:幼馴染のさやかの事を一途に想い、何よりも大事にしている。花屋の青年。

・さやか♀:健太の恋人、心臓病の為、幼い頃から入退院を繰り返している。優しく穏やか。

・田代♀:病院に昔から勤めているベテラン看護師。健太とさやかの事は子供の頃から知っている。

・さやか父♂: ※被り推奨

・医師♂: ※被り推奨


【配役表】 2:2 or 2:3


女悪魔♀:

男悪魔♂&さやか父&医師(被り):

健太♂:

さやか♀:

田代♀:※(2:2の場合はさやかと被りで)



※『』はモノローグまたは頭の中の声です。


女悪魔:ひとりでも多くの人間を地獄に落とすのがあたしの仕事。

    だって、悪魔だもん。

    今日もいい男があたしの誘惑をまってるわ。



男悪魔:君の黒い羽根 〜永遠の片想い(タイトルコール)



女悪魔:って・・・あんた人のことバカにしてんの?

    ジジイババアばっかの病院担当押し付けないでよ。

男悪魔:仕事より好みすんなよ。

女悪魔:あんたあたしにうらみでもあんの!?

    まわしてくるのは退屈な仕事ばっかじゃない!!

    あたしの武器はこの美貌とナイスバディなのよ。

    ほっといても死んくれるご老人にはもったいないわ。

    もっといい男のいそうなところがいいーー!!

男悪魔:あきらめな、悪魔よりいい男なんていやしねえよ。

    せいぜいジジイを喜ばせるんだな。(翼を広げ飛び立つ)

女悪魔:こんのド悪魔ぁーーーーーッ!!(背中に向かって怒鳴る)



【場面転換〜病室】病室で亡くなった老人の前に立っている女悪魔


女悪魔:ハァ〜イ おじいちゃ〜〜ん。
    
    おじいちゃん若いころずいぶん悪さしたのねえ。

    迎えにきてあげたわよん。

    (おじいさんが女悪魔の美貌に思わず手を伸ばそうとするのをぺちんと手で叩き)

    いやん 触んないで。

    お楽しみは地獄でね。(ちゅっとキスをすると魂が消滅し、地獄へ送られていく)

女悪魔:フン(パンパンと手を払ってつまんなそうにため息をつく)

    (そのままごろんとベットに大の字になってジタバタする)あーーーつまんなーーいーー!!

    退屈ーーーー!!こんな養老院みたいな病院じゃ、

    マジであたしの才能の持ち腐れよーーー!!!

    (ふてくされたようにごろんと横になり)はぁ〜仕事ほっぽって渋谷にでもいってやろうしら。

    (すると開いた扉の向かいの給湯室から一人の青年が出てくるのが目に入る。)

女悪魔:!!!(目を見開き慌てて起き上がる)

    い いた いい男がいたーーーー!!(翼を広げ後を追いかける)

    ・・・身長177センチ 年はハタチくらい。

    入院患者じゃないわね。(壁から覗きながらじいっと見つめる)

田代:あら、健太君今日も来てたの?

健太:こんにちは。

女悪魔:健太!!なんて健全そうな名前なのっ!(興奮している)

    健太っと・・・めもめも〜!(名前を手帳にメモしていると通り過ぎていってしまう)

    あっ!行っちゃう。

    健太くぅーーん 待って待ってーー!!(慌てて後を追いかける)


  【場面転換〜さやかの病室】

  (女悪魔、健太の後を追い、入っていった病室の扉を開ける)

さやか:いいのに健太 いつもこんな・・・。

健太:気にすんなよ、きれいだろ?

   さやかひまわり好きだったじゃん。 今日たくさん入荷したからさ!

さやか:(こまったように微笑みながら)健太がお店で売る分なくなっちゃうよ。

健太:いいからいいから、俺が好きでやってんだから。

女悪魔:(そんな2人の様子を扉の影から見つめて)ふぅーーん。入院中の彼女を足繁くお見舞いする彼氏。

    ふーん、いいんじゃなーい?(にやりと微笑んで)決ーーーめた!

    ターゲットは健太君!(びしっと指をさして)誘惑系の悪魔のチカラを見せてあげる。(余裕たっぷりに微笑み)

    純愛してる気の君を、地獄行きの悪〜い男にしてあげるわ。

    (すっと女悪魔の後ろに姿を現す男悪魔)

男悪魔:・・・・なんかまた良からぬこと考えてるな、やめとけやめとけ。

    お前は大人しく与えられた仕事をやってればいいんだ。

女悪魔:(はっと振り返り)なによーうるさいわねー!あんたには関係ないでしょー!

    私のやることに口出ししないでよ!!

男悪魔:へーへー分かったよ〜せいぜい痛い目見ないようにな。

女悪魔:うるさいーー!!見てなさいー!あんな人間私がちょっと本気を出せば、

    す〜ぐに落としてみせるわ!

   【場面転換】病室の廊下

田代:あら、健太君こんにちはー。

健太:こんにちはー。

田代:いつもお見舞いご苦労様〜!

  (健太が去った後を微笑みながら見つめて)ほんとさやかちゃんは幸せものよねえー!
  
   はぁ〜・・・わたしも後20年若かったらねえ〜
   
女悪魔:キラーン(目を光らせわざと健太にぶつかっていく)いまだっ!

健太:わっ!(ぶつかった衝撃で持っていた鉢を落とす)

女悪魔:キャッ

健太:ったぁー(顔をしかめる)

女悪魔:ご、ごめんなさぁーい。(甘い声で)

    あたし前見てなくて、ごめんなさい・・・・。(くびれのある身体を強調するようにして上目使いでじっと見つめる)

健太:・・・・・。(あっけにとられたように女悪魔を見つめ)

女悪魔:フフ(自信たっぷりに微笑む)

健太:ふ・・・ふざけんなこの女!前見て歩けよボケ!

    鉢が割れたじゃねぇか どうしてくれんだよ!!

女悪魔:!!?(思ってもいない反応に目を見開き)

健太:ったく、弁償は勘弁してやるけど、そこの掃除はちゃんとしとけよ

   看護師さんは忙しいんだからな!

女悪魔:ちょ・・・ちょっと あたし足痛いんだけど。

健太:病院でよかったな いくらでも診てもらえよ。

   じゃあな。(冷たく言い放ち去る)

女悪魔:・・・・・・。(信じられないように固まって)

    なに?なんなの?

    もしかしてあたしのこと、眼中にない!?


   (その後も何度も健太の前に現れてあの手この手で誘惑するのものの成果なし)


    そんなバカな!!

    そんなバカなあぁーーーー!!


  【数日後〜病室の廊下】

  (健太が田代と話しているのを壁から隠れて覗き見ている女悪魔)

健太:ねぇ田代さん。

   最近よく見るケバい女はなんなの?

田代:ケバイ女?ん〜まあここに来るっていう事は、お見舞いの人じゃないかしらねえ

健太:へぇ〜なんか見てて暑苦しいんだけど。

女悪魔:(ぎりぎりと壁に爪をたてて)く・・・くやしいい

    くやしいいーーーー!!!!


   【場面転換〜中庭のベンチ】
    ぐったりとへたりこんでいるところに、男悪魔が空から舞い降りベンチの背もたれに腰掛ける。

男悪魔:なにへこんでんだよ。

    どうやら、得意の誘惑攻撃もカタナシみたいだな

女悪魔:(きっとにらみつけ)人間にも時々色じかけがきかないタイプがいるけど、

    あいつは異常よ!変態よ!変態!!

男悪魔:お前になびかない男は皆変態なわけ?たいした自信だな。

女悪魔:(むっとした顔をして)だってそーじゃない!

    あんな病弱そうで退屈そうな女より、絶対あたしの方がいいのに、態度が全然ちがうのよ!マジむかつくわ!!

男悪魔:・・・・。(静かにじっと見つめて)

    片想いなんて似合わねえよ。早いとこあきらめるんだな。(そういうと翼を広げて空へ舞い上がる)

女悪魔:なっ!(顔を上げて)

    片想いじゃないわよ!バカにしないで!!

    絶対に落としてみせるわよーーーー!!(空に消えていく後ろ姿に叫ぶ)


    ・・・・・。(叫んだ後黙り込みぐて〜っと再びベンチに倒れこむ)

    はぁ〜・・・って言ったって知らないわよぉ〜〜〜

    色気で落とす以外の方法なんてさあ・・・・。

女悪魔:『他の方法なんて知らない・・・。

     やさしさや気配りが大事なんてキレイな建前並べても、

     あたしが狙った男はみんな、地味な恋人を捨てて、あたしに夢中になった。

     あたしは男の欲望のカタチそのものなのよ。だれにも負けない。みんな地獄に落としてやる。

     あの健太も絶対・・・・。』

女悪魔:(花壇の植え込みの端っこにある花に気付く)ん?あれ?この花 どっかで・・・。
   
    (花に手を伸ばそうとした瞬間、ザハーー!!と水を頭から被せられる)

女悪魔:きゃああーー冷たいーー!!水??なっ?なに・・・!(驚いて起き上がる)

健太:花に触んな!

女悪魔:(一瞬驚いたように見つめ、はっと我に返り)な、なによ!べつに悪いことしてないわよ。

健太:うそつけ!ちょっとだけと思って摘(つ)もうとしただろ!

女悪魔:なっ、してないわよ!

健太:どっちでもいいから謝っとけ。

   おまえのせいでこの花、ここに植えられてんだからな。

女悪魔:はあ?

健太:お前が割ったあの鉢の花だよ。

女悪魔:(はっとして)あ・・・。

    そっか、あのときの・・・・。

健太:ほんとはさやかにやるはずだったのになー

女悪魔:・・・・。(むうっとした顔)

   (思わず)じ・・・じゃあ この花あたしにちょうだいよ!

健太:は?

女悪魔:いいじゃない。どうせここに植えとくんでしょ?

健太:・・・・。(驚いたように見つめて)水・・・ちゃんとやる?

女悪魔:うん。

健太:まわりの植木にもついでにやる?

女悪魔:うん!

健太:花壇にも?

女悪魔:うん!!

健太:(満面の笑顔)じゃああげる!

女悪魔(笑顔に目を奪われて)・・・・!

    ・・・・・あんたずいぶん花好きなのね

健太:え〜?だって俺 花屋だもん(にこっと笑う)

   じゃあな、ちゃんと世話すんだぞ!(ぽんっと女悪魔の頭をはたいて去る)

女悪魔:・・・・・・。(去っていった方をぼーっと見つめている)



  【数日後〜女悪魔毎日ぶつくさいいながらも花の面倒を見ている】


女悪魔:よいっしょ・・・んっしょ!・・・・たくっ・・・勢いで言っちゃったけど。

   なんであたしがこんな・・・。(ぶつぶつと文句を言いながら巻いてあるホースを持って歩いている)

   ううーもうー!このホース、これ地味に重いんだからー手も汚れるしーー!

   (そうしているとふいに声が聞こえてくる)

田代:それにしても健太君も大きくなったわね〜

健太:(照れくさそうに)そうですかね?なんかそういう風に言われると恥ずかしいな。

田代:そうよ〜なんてったって私は、健太君とさやかちゃんが子供の頃から見てるからね〜

女悪魔:・・・!(その会話を聞いて立ち止まる)

健太:はは、もう田代さんには敵わないな〜

   じゃあ、俺さやかの所に行ってきます!

田代:はい、いってらっしゃい〜

女悪魔:あの・・・・。(健太が居なくなると田代に近づき声を掛ける)

田代:ハイ?

女悪魔:あの健太って人、ずっと前からここに通ってるんですか?

田代:!(ピンと来て)ああっ!あんたね!?噂の色気オバケは!!

女悪魔:お、オバケですって!?

田代:健太君をたぶらかそうったってそうはいかないよ!

女悪魔:なっ、だれを好きになろうと自由でしょー!!

田代:そうはいかないよ!健太君にはさやかちゃんがいるんだから

   小さいころからさやかちゃん時々入院してたから、健太君もこの病院のなじみなんだ。

   あの2人を応援していない人、ここにはいないんだからね!

女悪魔:フン、おばさんの幻想押し付けられて、迷惑でしょうよ。

田代:ちがうわよ!

   あんた見たことないの?さやかちゃんの病室の壁、2人の写真でいっぱいよ。

   病室以外での思い出が少ないから、その分ひとつひとつを大事にしてるんだよ。

   小さい頃からずっとずっと。

   あんたなんて入り込む隙ないんだからね!

女悪魔:・・・・・。

田代:だからとっとと・・・。

女悪魔:バッカじゃないの!

    そういう惰性の恋愛を終わらせるためにあたしがいるのよ。

    絶望的な破局を見せてあげるわよ!

田代:絶望的な破局なんてあるわけないでしょ!

女悪魔:フン、まぁ見てなさいよ


   【時間経過〜鼻歌を歌いながら持ってきたホースで花や花壇に水をやっていると、近くの木陰から声がする】


女悪魔:ふふふ〜ん♪ほーら、お水よ〜〜あたしが面倒みてやってるんだから、感謝してはやくおっきく育つのよー

健太:おじさん 話って?

女悪魔:!?健太・・・?(驚いたように振り返って)

さやかの父:ああ・・きのう医師から話があってね。

      ・・・さやかの心臓の手術は行わないことに決まったそうだよ。

健太:え・・・。

さやか父:さやかは過去2回手術を受けて2回とも失敗してる。

     手術を乗り切る体力がないんだよ。危険な賭けを繰り返す事はもうできないんだ。

健太:・・・これからも入退院を繰り返すしかないんですか・・・・?

さやか父:・・・・・健太君、君の気持ちは本当にありがたいんだが・・・・。

     さやか以外の女性というのは考えられんのかね。

健太:え・・・?

さやか父:正直言って・・・さやかには結婚生活は難しいよ。

     君はまだ若いんだ。自分の人生を大事にすべきじゃないのかな・・・・。

女悪魔:(隠れながら聞いている)おお〜!!おじさん〜〜!!良いこという!!

     そーだ そーだあ!!     

    (健太一人残って)
健太:・・・・(辛そうに俯く)・・・さやか。(泣きそうな表情で目を手で覆う)

田代(回想の声):『絶望的な破局なんてあるわけないでしょ』

女悪魔:・・・もう目の前よ。

    (花に目をやる)なっ!? やっだあ虫食ってる!!

    しっかりしてよーあんたがあたしのラブアイテムなんだから!

    今こそ落ち込んで迷ってる健太に迫るのよ。

    この花みたいに!あなたのためにあたしは咲くわ!!な〜んてね

    ふふっ・・・ふふふっ(想像しながら微笑む)

    あと一息!そろそろ勝負かけるわよ!!

   (そこに健太がさやかを車イスにのせて通りがかる)

健太:ほら、さやか、いい気持ちだっただろ〜!たまにはこうして外にでなきゃダメだぜー

    俺さやかの車イスくらい、いくらでも押すからさ!

さやか:ふふ、そうだね、ありがとう健太。(微笑む)

女悪魔:あ・・・・健太だ!(健太の姿に気付き、呼び止めるように声を掛ける)

健太:あ(健太も気付き足を止める)

   よう!約束ちゃんと守ってるか?

さやか:健太 知ってる人?

健太:うん、前に俺の鉢割った女。

さやか:・・・・。(じっと見つめる)

女悪魔:・・・。(宣戦布告するような瞳で見返す)

さやか:健太、私部屋に戻ってるね。

健太:え?

女悪魔:やった!

さやか:大丈夫今日は気分もいいし、健太はお友達とお話してていいよ。

   (ぺこりと頭を下げる)それじゃあ、私はこれで。(自分で車イスを押して去る)

女悪魔:・・・。

    『なによ・・・・余裕見せてんじゃないわよ!

    あんたが負けるのも時間の問題なんだからね!!』

健太:お、えらい!まだ枯らしてないな。(花を覗き込み)

女悪魔:(得意げに)えらいでしょ、ちゃんと毎日水あげてんだから!

健太:へー 意外とマメなんだ。

   (にこっと笑って)乱暴なこと、いろいろ言って悪かったよ。

    花大事にするやつ 俺も好きだ。

女悪魔:・・・!

    『・・・・・あたしには下心しかないのに・・・

    そんなふうに笑わないでよ。』

健太:よっと。(いきなり芝生の上に寝転がる)

女悪魔:え?ちょっと、何急に寝転んでるのよ!

健太:はは!お前も寝転がれば?ここの芝生寝転がるとすげー気持ち良いんだぜ!

女悪魔:なっ!スカートでそんな事できるわけないでしょー!

健太:そんな短いスカートはいてるからだろ〜

女悪魔:なによ!失礼ね!男は皆こういうのが好きなんでしょ〜

健太:俺はそんな格好ですましてる奴より、一生懸命な奴の方が好きだけどな〜

女悪魔:・・・・なによ、かっこつけちゃって!

健太:だから顔に泥つけて、花に一生懸命水やってる、今のあんたの方が好きだ(悪戯っぽく笑って)

女悪魔:なっ!なによ・・・!ばっかじゃないの!

健太:ははは!なぁ、そういえばあんた。なんでこんなしょっちゅう病院にいんの?

女悪魔:フン!くたばりそうなジジイがいるからね〜来ないわけにいかないのよ。

健太:へえ 大変だな。

女悪魔:(寝転んでいる健太の手を見て)あれっ、あんたすごい手荒れてる。どうしたの?

健太:え?ああ、言ったじゃん俺花屋だって。

   っと(身体を起こし、荒れた自分の指を見つめ)水仕事で年中荒れちゃうんだよ。

女悪魔:・・・・ちょっと手貸して。(見つめていたが、急に健太の手を取る)

健太:(驚いて見上げる)え、なに?

女悪魔:いいから、じっとして・・・。

   (悪魔の力でみるみるうちに手がキレイになっていく)

健太:え!?(目を見開き)

   なんで!?すべすべになってる!すげーお前なにしたんだよ!
 
女悪魔:ぜーはー・・・ふっふっふ〜〜〜!(得意げに笑うがぐったりしている)

     よ、よく言うじゃない・・・・恋する乙女は…魔法が使えるって!すごいでしょv

健太:(ふっと悲しそうな表情になり)・・・いいな。

   俺も魔法使えたら・・・・さやかの病気治すのに。

女悪魔:・・・・。

    あの子はなんて病気なの?

健太:心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)

   心臓の弁が正常に動かない病気だって、

   さやかは学校も休みがちで、中学も高校もすごい苦労して卒業したんだ。

   小さいころはまだマシでよく遊んだんだけど。

女悪魔:・・・・・。

健太:そうそうガキのころ、さやかと2人で公園の林で遊んでてさー

   俺、木から落ちて腕切っちゃって、すげー血が出るんだよ。

   さやかずっとそれ押さえてて、手を離すと出血するから助けも呼びにいけなくて。

さやか幼(回想の声):『だれかーーだれかきてえええーーー!!だれかあああーー!!』

健太:・・・俺の腕押さえつけたまま大声だしつづけて、助けが来るころにはさやかの声、出なくなってた・・・。

   ・・・・さやかの血まみれの手とあの声を忘れない。

   ずっと一緒に生きてきたんだ。これからも変わらない・・・・!たとえさやかが、ずっと病院から出られなくても・・・・。

女悪魔:(しばらく黙った後口を開く)・・・・なに言ってんの?

    人間なんて打算なしじゃ生きていけないくせに。

    あたしはたくさん見てきたわ、愛だとか恋だとか言っても、結局自分の都合のいいものしか選ばないのよ。

    趣味が合う、顔が好み、お金持ち。お望みにそったハイスコアで、運命の人なんて言えちゃうのよ!

    あんたのその気持ちも結局同情でしょ?意地張らないで言っちゃいなさいよ。

    あんな大変な女の子負担しきれないって!

健太:・・・・そんなふうにしか思えないなんて、かわいそうなやつだな。

女悪魔:!!(ぐいっと服を引っ張り押し倒してキスをする)

健太:んっ

女悪魔:(唇を離し、覆いかぶさったまま)なにキレイごと言ってんの?

    そんなこと言っても、ホントは女の子とエッチなこともしたいんでしょ?

    あの子となんて、なんにもできないじゃない。そんなつまんない子やめなよ。

健太:・・・・・。

女悪魔:ねえ、ドキドキしてるんでしょ?(胸に手をあてようとする)

健太:してないよ。だから離せ。(冷静に冷たくいう)

女悪魔:!?

健太:バイバイ。(立ち上がり後ろ手を振りながら去る)

女悪魔:・・・っ!

    バカァ!!強がりもいいかげんにしなさいよ!!(後ろ姿に叫ぶ)

    ・・・・そんな恋信じない。

    自分にもまわりにも引っ込みがつかなくなってるだけよ!

    あの子に同情して 他の子を選ぶことを諦めてるだけよ。

    (ぎゅっと拳を握り締め)そんな恋信じない!!


   【場面転換〜手術室】

医師:午後5時30分、ご臨終です。

   (ベットに横たわっていた女の人が幽体になって体から浮き出る)

女悪魔:あんたずいぶんあくどい方法で男陥れてきたのねえ。

    残念ながら地獄行きよ。バイバイ!(パチンとその女の幽体の頭を指ではじく)

    フン(ためいきをついて)

    人間なんてこんなもんよ、腐ってるやつはとことん腐ってるし。

    善人面してるやつだって・・・(地獄行きの死亡者リストを見ながら)

    結局自分のことしか考えてないんだか・・・

   (死亡者リストにさやかの名前があるのを見つける)

女悪魔:え・・・?九条さやかってあの女じゃない。

    あの女死んじゃうの?病気ってそんなにひどかったの!?

    でも なんで地獄行きのリストに・・・・。

    !?自殺・・・・?

   (リストを握り締め)自殺は大罪 無条件で地獄行き。

    『・・・ホラね。

    やっぱり人間って自分のことしか考えてない。』


   【場面転換〜さやかの病室にやってくる】

女悪魔:『結局自分が死んで泣く人のこととか、困る人のこととか考えないで、病気の辛さに負けちゃうんだ。

      弱い女!! 』

さやか:(女悪魔に気が付きにっこりと微笑む)こんにちは。

女悪魔:!?(ドアから覗いているのに気づかれびくっとする)

さやか:(優しく)健太のお友達ですよね、どうぞ入ってください。

女悪魔・・・・。(もじもじしながら傍に近づく)

さやか:病院へは誰かのお見舞いですか?いつも大変ですね。

女悪魔:別に、大変じゃないです。健太がいるからいつも楽しいし!

さやか:・・・・・(じっと見つめて微笑む) 健太が好き?

女悪魔:(フンっとそっぽを向いて)ええ好きよ!だってかっこいいし優しいし。

     でも健太はあなたのことが大事みたいだけど。

     わたしはおかしいと思うけどね、やっぱ健康な女の方がいいじゃない。

     ・・・でも健太はちがうのよ・・・あなたじゃなきゃダメだって・・・。

     わたしなんて振られっぱなし。あの男もバカよねー・・・。

女悪魔:『・・・どうして?どうして死のうなんて考えるの?

     あんなに健太に愛されてるのに・・・どうして・・・!』

さやか:(じっと見つめて)・・・・・健太って不思議でしょ。

    どんな約束をしたわけでもないのに、私しか見ない・・・。

    ・・・・私がいたら健太は幸せになれない。

    健太には健康な人の方がいいって、その意見に私も賛成だわ。(微笑む)

女悪魔:!!

   (そこに健太がいつものように花を持って入ってくる)

健太:あれ おまえなにしてんだよ。

さやか:健太・・・。

女悪魔:! ちょっと来て!

健太:え?わっ!な、なんだよいきなり!!

   (無理やり健太の腕をつかんで病室から連れ出す)

健太:なんだよおまえ 俺さやかに花・・・

女悪魔:あんたわかってんの!?その一途さがあの子を追いつめてるのよ!このままじゃ大変なことに!!

    ・・・・(はっと我に返って)な・・・なんでもない・・・。

健太:はあ??

女悪魔:『なに考えてるのあたし・・・あの女なんて死んじゃった方がいいじゃない』

健太:・・?

女悪魔:それにしてもあんたもよくやるわよねー。毎日お見舞いなんて、尊敬しちゃう エラーーーーイ!!

健太:・・・・べつに えらいこともなにもないよ。

   だってみんなよく言うじゃん!病めるときも、健やかなるときもって。(微笑む)

女悪魔:・・・・・。

女悪魔:『病めるときも・・・健やかなるときも』

健太:誰に誓ったわけでもないけど、俺自分と約束したから。

女悪魔:『これを愛し・・・これを敬い・・・死が・・・2人を分かつまで・・・・』

    ・・・・・・っ(涙がこぼれおちる)

健太:え・・おい・・・(驚いて手を伸ばそうとする)

女悪魔:!!(手を振り払って走り去る)

健太:おい!!


   【外に飛び出してきたところに男悪魔が空から舞い降りてくる】

男悪魔:おい、大丈夫か?

    だからやめとけっていったのに。

女悪魔:なにがよ!!

    あのバカな恋がどうなろうが知ったこっちゃないわ。

    見ものではあるけどね!

男悪魔:・・・・・。
    
女悪魔:ひとりよがりな気持ちを大事にして、一生懸命愛した気持ちがあの子を殺すのよ!!

    後悔しないでいられるかしら!

男悪魔:そんな顔して・・・・お前の方が泣きそうな顔してるぞ。

女悪魔:なっ!あたしが!?何言ってるのよ!!そんなわけないでしょ!!

男悪魔:深入りするなよ 助けようとすれば消されるぞ。

女悪魔:バカにしないで!あたしは悪魔よ!!

    死が2人を分かつまで?上等じゃない!あの子の魂 あたしが地獄に送ってやるわ!
 
    (悪魔の姿になり翼を広げて飛び立つ)

男悪魔:おい!!・・・・あいつ。

女悪魔:『 死ぬのなんて簡単よ。世界中で何千人何万人が繰り返す。

      苦しかったら死ねばいいわ。憎かったら殺せばいいわ。

      だれも止めやしない・・・。』

    (さやかの病室に現れる。※さやかには見えていない)

    (大量の睡眠薬を見つめているさやか)

女悪魔:『あたしが地獄に連れてってあげる』

さやか: この薬を・・・飲みさえすれば・・・。

     (意を決したように薬を飲み込む)・・・・んっ!げほっ ごほっごほっ!(苦しそうにむせる)

田代:『あんた見たことないの?さやかちゃんの病室の壁、2人の写真でいっぱいよ!』(回想声だけ)

女悪魔:・・・・っ(女悪魔さやかの背中の壁に数え切れないほど貼られている2人の写真を見つめる)

さやか:(また薬を飲み込む)はぁ・・・はぁ・・・もう少し・・・

     ・・・!(苦しそうにしながら、ふと健太が持って来てくれたひまわりの花が目に留まる)

健太:『さやかひまわり好きだろ!ほら!(笑顔)』(回想声だけ)

さやか:・・・・っ(その花をいとおしそうに抱きしめて涙をこぼす)

健太:『さやか。元気になったらいつか、俺といっしょに花屋やろう』(微笑む健太の笑顔が頭に浮かぶ)

さやか:っ・・・うっ・・・健太ぁ(耐え切れなくなり嗚咽まじりに泣く)

   【SE:ガシャーン!!(その瞬間花瓶が割れる)】

   !?(驚いて顔をあげると、目の前に悪魔の姿をした女が立っている)
   
   え・・・?あなたは・・・きゃっ!!

   (驚いていると怖い顔をした女悪魔がさやかに覆いかぶさって首を絞める)

女悪魔:そんなに死にたいなら殺してやるわよ!!眠ったまま死のうなんて甘いのよ!

    最後の最後まで苦しみなさいよ!!

さやか:うっ・・・くっ・・・・(苦しそうに)

女悪魔:これからあんたは、死ぬほど健太を苦しめるんだから!!(涙をながしている)

さやか:!!(はっとして顔をあげるさやか)

女悪魔:・・・・・あ、あんた・・・・(涙がこぼれおちる)あんた・・・ほんとにこの自殺が健太を幸せにすると思ってんの・・・!?

    ほんとに健太のためを思うなら生きなさいよ!どんなに辛くても、一生ベットから出られなくても、1秒でも長くいきなさいよ!!

    健太のために生きなさいよ!!!!(泣きじゃくりながら叫ぶ)

健太:さやか!?(大声に気付いて健太が慌てて病室に入ってくる)

   なっ!(女悪魔が首を絞めてさやかに覆いかぶさっているのを見て)

   (慌てて駆け寄り引き剥がす)なにやってんだおまえ!!どけっ!!(女悪魔を突き飛ばす)

女悪魔:うっ!!(よろける)

健太: ふざけんな! さやかになにをした!!大丈夫かさやか?

さやか:ごほっごほっ!!げほっ!!(解放されて咳き込み、飲んでいた薬を吐き出す)

    (薬を吐き出したのを見て安堵したように息を吐き)
女悪魔:(背後から声)・・・・・そんなに私が何かするか心配?(わざと挑発的な態度で微笑む)
   
    だったら・・・!(突然右手を上げてさやかに力を注ぎ込む)

さやか:きゃあ!!

   (さやかの身体を光が包み込み吸収される)

さやか:(驚いたように顔を上げる)え・・・・・!?

(健太女悪魔の方を振り返る)

健太:おい!今の光!お前がやったのか?!(近づいてきて)

   出て行けよ!!もうさやかに近づくな!!

   (女悪魔はそっぽを向いている)

   おいっ・・・!こっちむけよ!えっ・・・?(黙っている悪魔の手とってこっちを向かせる)

   ・・・おま・・・・・・なんで泣いて・・・?

女悪魔:(ふっと悲しそうに微笑み)あんたなんて 地獄に落ちちゃえ

    (女悪魔の身体が徐々に透けていく)

健太:!? お前身体が・・・透けて・・・

女悪魔:(姿が消えそうになりながら健太に近づき)

     うそだよ。   幸せになってね・・・

健太:えっ・・・(女悪魔そっと健太にキスをした瞬間、跡形もなく姿が灰のように消えていく)

健太:!!

さやか:!!

健太:・・・・・・・消え・・た・・・?

    (姿が消えた後、黒い羽根が空に舞い上がっていく)

    (その様子を見ていた悪魔)

男悪魔:・・・・バカな女・・・・あれほど深入りするなっていったのに。

    だから嫌なんだ あーいう頭軽い悪魔・・・・。

   (しばらくだまって悔しそうに呟く)

    ふざけんな・・・・悪魔が掟を破って病人の身体を治すことに何の意味がある。

    あいつのおかげだって だれも気づきはしないのに・・・!!


   【時間経過】病院の外の中庭にて

田代:はい、これ!皆からお花受け取って!

さやか:わぁ〜ありがとうございます。(嬉しそうに微笑んで花束を受け取る)

医師:退院おめでとう、さやかさん。 

   こんなに早く良くなるんて、本当におめでとう!

さやか:ありがとうございます。

医師:いや〜でも本当に驚いたよ、こんなことってあるんだね。

   医者が言うのもなんだけど、まるで奇跡のようだよ。

田代:でも2人に会えなくなると思うと淋しいわ〜時々遊びにきてね、元気でね!

健太:(ぼーっと悪魔が育てていた花の方を見つめている)

さやか:健太?

健太:あの・・・あそこの花持って帰っていいですか?

医師:ああ、いいよ君が植えたんだろ?

健太:ありがとうございます。

   (花を掘り起こしながら、今までのことが思い浮かんでくる)

   おまえさ・・・やっぱり本当に魔女だったんだろ?

   あの時 ほんとは ちょっとドキドキしてたんだ。

   ・・・内緒だぞ。(寂しげに微笑む)


男悪魔:(その様子を見つめながら)・・・これでめでたくハッピーエンドか・・・。

    フン、本当にバカだよな・・・お前。

    お前は消えて、あいつらは幸せになって・・・これじゃあお前が損しただけじゃねーか。

    だから言っただろ。お前はだまって仕事してればいいって・・・。

    悪魔のくせに、純粋でバカで・・・・本当に悪魔らしくないやつだったよな・・・。


  【時間経過〜数年後】
  

健太:『それから時が過ぎ、すっかり元気になったさやかと俺は2人で花屋をやっている。
  
    今ではあの時のことは夢だったんじゃないか、なんて思ってしまうけれど・・・』


さやか:健太!なにぼーっとしてるの早くしないとお客さん来ちゃうわよ〜!(離れた所から呼びかける)

健太:(はっとして)ああ、今行くー!



女悪魔:『病めるときも健やかなる時も、これを愛し、これを敬い。

     死が2人を分かつまで、共に歩む事を誓いますか?』


さやか&健太:(笑顔で)『・・・・誓います。』



(おわり)